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3回 亀ちゃんコラム

失ってはいけないもの

阪神淡路大震災のとき、テレビには連日、悲惨な光景が映し出されていました。
大火事の中、自宅が燃えていくのを見つめながら、年配の女性が泣き叫んでいました。
「家が燃えてしまう、燃えてしまう」
その隣で、別の女性が肩を支えながらこう声をかけていました。
「家なら、また頑張れば建てられる」
その光景が、今でも心に残っています。

 

以前、「人が失うものには大・中・小がある」と聞いたことがあります。
小はお金。努力すれば取り戻せる。
中は信用。時間はかかるが、やがて回復できる。
では大は何か。それは「希望とやる気」だといいます。
これを失えば、人は前に進めなくなる。私も深く納得しました。

 

そのことで、私もある出来事を思い出します。
医師から、やがて目が見えなくなると告げられた私は、「カウンセラーになろう」と決めました。
仕事帰りに教室へ通い、5年かけて学び続けました。

 

最終段階、卒業レポートに取り組んでいた頃、視力はほとんど残っていませんでしたが、必死で書き続けました。
「これで大丈夫」と思えた矢先、最後の土壇場で状況が一変し、このままでは合格できないという状況になってしまいました。

 

その夜はあまりのショックで一睡もできず、朝早く誰もいない里山へ向かいました。
泣きたいのに涙は出ません。
泣けば楽になれるのに、どうしても涙が出ません。
5年間の苦労の日々、家族の顔を思っていたら、ようやく一筋の涙が出ました。
するとせきを切ったように次々と何かが溢れてきて、大きな声をあげて泣くことができました。

 

泣くだけ泣いたあと、ふと自分に問いかけました。
「本当に、ほんとうにもう道はないのか」

 

妻に手伝ってもらえば、まだできるかもしれない。
どうせだめだと思うなら、もう一度だけやってみよう。
そう思ったとき、小さな希望とやる気が心に灯りました。

 

結果、なんとか乗り越えることができ、今の私があります。
もしあのとき、その小さな光を手放していたら、今の私はいません。

 

あれは、失いかけたものを、もう一度拾い上げた体験でした。
人生で本当に失ってはいけないのは、何かを失ったときに、もう一度立ち上がろうとする心なのかもしれません。
あの経験は、今でも私の心の大きな支えになっています。

コラムを書いた人

にしかめ まこと西亀 真

盲目のセラピスト・アイマスク講演家。「幸せの入り口屋」初代当主。広島県三原市生まれ。
百貨店でシステムエンジニアとして勤務後、難病「網膜色素変性症」を発症。視力を失う中でカウンセラー資格を取得し、産業カウンセラーとしても活動。現在は全国で講演活動を行い、「感謝と挑戦とあきらめない」をテーマに心を整えるメッセージを届けている。

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著書のご紹介

西亀真さんはこれまでに
2冊の著書を出版されています。

  • 幸せの入り口屋いらっしゃいませ
  • 盲導犬シエルと歩いた幸せの道