自分で選んだ道だから
私は勤めていた会社で、カウンセリングの仕事をしていました。
あることがきっかけで、盲学校へボランティアでカウンセリングに行くようになりました。
そこで、生まれて初めて「あんま」をしてもらい、大きな衝撃を受けました。
「あんま」は、心も体もほぐしてくれるものでした。
「私のカウンセリングにも、“あんま”を取り入れたい」
そう思った私は、無理を承知で会社にお願いをしました。
「盲学校に通わせてください」
会社の温かい計らいで、その願いは叶いました。
飛び上がるほどうれしかったことを、今でも覚えています。
しかし、入学してみると、盲学校での勉強は想像をはるかに超える大変さでした。
私の場合は、会社と学校の両立です。
朝は5時前に起き、夜は11時過ぎに寝る生活。
覚えることは山ほどあり、毎日時間に追われていました。
休日は12時間以上、机に向かうことも珍しくありませんでした。
肉体的にも精神的にも疲れ果てる毎日でした。
ある日、私の事情を知る盲学校の先輩が声をかけてくれました。
「西亀さんは、仕事と勉強の二つがあって、この学校の中で、一番苦労してるんじゃない?」
「私のこのしんどさを分かってくれている人がいる」
そう思うと、胸が熱くなりました。
「はい。想像していた10倍、20倍も大変ですね……」
すると先輩が、静かにこう言いました。
「まぁ、自分で選んだ道やからな」
その瞬間、呼吸が止まりました。
頭から血の気が引き、後ろからハンマーで殴られたような衝撃を受けました。
考えてみれば、誰が私に盲学校へ行けと言ったでしょう。
誰も言っていません。
会社にお願いをし、学校にもお願いをして入学させてもらったのは、自分です。
自分の夢をかなえるために、自分で選んだ道でした。
「しんどい」と泣き言を言える立場ではなかったのです。
その日、私は心に固く誓いました。
「もう二度と泣き言は言わない」
それからも、苦しい時、つらい時、逃げ出したくなる時。
私は何度も、この言葉を思い出してきました。
「まぁ、自分で選んだ道やからな」
私が視力を失ったことは、自分で選んだことではありません。
男性に生まれたことも、この家に生まれたことも、自分で選んだわけではありません。
けれど、それもまた、私に与えられた道です。
選んだ道も、与えられた道も、その道をどう歩くかは自分次第なのだと思います。
あなたが自分で選んだ道。
あなたに与えられた道。
そのどちらも、今日一日をどう歩くかは、自分で決めることができます。
私もまた、自分の道を一歩ずつ歩いていこうと思います。
コラムを書いた人
にしかめ まこと西亀 真
盲目のセラピスト・アイマスク講演家。「幸せの入り口屋」初代当主。広島県三原市生まれ。
百貨店でシステムエンジニアとして勤務後、難病「網膜色素変性症」を発症。視力を失う中でカウンセラー資格を取得し、産業カウンセラーとしても活動。現在は全国で講演活動を行い、「感謝と挑戦とあきらめない」をテーマに心を整えるメッセージを届けている。
はこちら
著書のご紹介
西亀真さんはこれまでに
2冊の著書を出版されています。
幸せの入り口屋いらっしゃいませ
盲導犬シエルと歩いた幸せの道

@manaby_honmachi
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